
お知らせ
少し前、製造現場などで「ムダ、ムラ、ムリ」をなくそうとよく言われていた。これは業務や生産の効率を上げ、製造コストを削減し、人の疲労や事故を減らすなど、仕事の改善に役立つものである。真面目で勤勉な日本人が互いに協力し合った結果、経済成長に大きく貢献した。QCサークルなどが盛んだった時代は、新人までもが先輩に倣って改善活動に携わっていたようだ。しかしバブル崩壊後、製造業の国際競争力が低下し、現在は生産性の向上が課題となっている。
特にサービス業などの生産性の低さが指摘されるが、これは価格や賃金の上昇率が諸外国に比べて低いため、数字上そのように見えている側面もある。例えば、あるサービスが日本で1千円、他国で3千円だった場合、それだけで他国の生産性が3倍であるとは言えない。日本のサービスは品質が高いにもかかわらず価格が低く抑えられているため、見かけ上の生産性(数値)が低くなってしまうのだろう。
効率を上げるには、現場の観察が重要である。そして、多くの経験と小さな改善工夫の積み重ねによって向上していく。ただし、効率向上はあくまで戦術レベルのものであり、経営判断の失敗を挽回できるものではない。事実、現場の業務改善で多くの賞を受賞した中小企業が倒産したという話もある。それゆえ、後述する「効果」にも注目する必要がある。結論から言うと「効率」と「効果」のバランスを考えることが大切だということだ。
ところで、現在はとにかく効率が重視される時代である。とくに若い世代においてその傾向が顕著だと言われている。
タイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果・・・かけた時間に対する効果や満足度)
コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果・・・支払った費用に対して得られる効果や満足度)
ここで私が「効率」として紹介している理由は、一方で「効果」を求めるには達成すべき目的が重要であり、そのためには思考や哲学、さらには考え方や問題解決のプロセスを理解することが必要になるからだ。これに対して、効率は、手っ取り早く方法や手段さえ分かれば改善できる。つまり、自分でじっくり考えなくても、正解を知っている人に答えを聞けば解決できることが多い。そのためか、若い人から、深く考えずにすぐ答えを求められる場面が多くなった気がする。やり方を十分に吟味せず、安易に判断してしまうのだ。これでは丸暗記のようになってしまい、応用が利かない人が増えていくのではないかと懸念している。思考の幅が狭いため、基本を少し応用すれば対応できることにも気づかず、自分にピッタリと当てはまる「正解」をひたすらネット等で探し回ったりする。しかし、そうしてしまう理由も分からなくもない。インターネットやSNS等が発展した情報過多の時代において、個性を発揮することも求められる現代社会では、無駄を徹底的に排除し、最小限の努力で情報通になるための生存戦略なのだろう。映画やドラマの倍速再生も、今や当たり前のようである。連続ドラマを、初回と最終回だけを見てから全体を視聴するか決める人もいるそうだ。音楽も、聴いてすぐに印象に残らなければ飛ばされてしまうため、最近の曲はイントロが短く、飽きさせないようにリズムやコード進行が複雑なものが多いようである。
効率と効果はどちらか一方が大切というものではない。どちらも不可欠である。野球に例えるなら、効率はヒットを増やし、バントや盗塁を確実に決めて得点に繋げるようなものであり、効果は一発で戦況を変えるホームランを狙うようなものかもしれない。現場の管理者は「効率」に注目し、経営者はやはり「効果」の方を重視した方が良いだろう。効率が向上しないことよりも、効果(成果)が上がらないことの方が、経営上の責任が重いからだ。しかし、状況に応じて適切な意志決定を行い、より良い成果を生み出すことこそが企業活動の本質である。私たちは短期・長期の数値や目標を常に意識しながら、仕事を進めていくべきである。
令和8年7月 276号(R08.07)
仕事では効率重視と言われるが、それが常に正しいとは限らない!?