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2026/06/10NEW
令和8年5月 274号(R08.05) AI時代になると税務調査などが大きく変わるのか!?

令和8年5月 274号(R08.05)

AI時代になると税務調査などが大きく変わるのか!?

 最近は大手金融機関の融資判断にAIが活用されているなどと聞くことがあります。また、国税のコンピュータシステムである「KSK」(国税総合管理システムの略称)が「KSK2」に更新され、秋頃から本格的に運用されると言われているので、税務専門家の間では色々情報が行き交っています。しかしながら、結論から言うと、税務調査などが急速に大きく変わることは無いようです。もちろん国税当局が、今まで把握し難く、申告漏れがあっても見逃されていたところが減る可能性はありますが、これは本来の正しい姿に近づくので望ましいでしょう。なお、今回の話は先日、開催があった国税OBの税理士による研修会で得られた情報を元にしています。

 最近の税務調査の傾向ですが、コロナ禍で実地調査(実際に納税者と接触しておこなう調査のこと)が減った後、現在では以前に戻りつつも未だ少ない傾向です。コロナ禍から増えてきたのが「簡易な接触」と言われるものです。事例として、生命保険の一時金の申告漏れの情報を税務署が把握した場合、まず、「確定申告の見直し・確認について」と言う文書が郵送されます。それを、納税者が無視していると、次に2回目の文書が送られてきます。指定された「期日までに連絡がないと、調査を実施します。」と口調が強くなります。さらに無視すると、「更正決定通知」が送られてきて、申告誤りによる追加税額の通知となります。このように行政指導により実地調査を省略して終わらせるものです。徴収税額もかなりに上り、実地調査で減った以上に成果を上げています。税務署にとっても効率が良いので、今後もこの傾向(簡易な接触)は続くと思われます。

 マイナンバーによる金融商品等の把握、企業や行政機関からのデジタルでの情報提供、インボイス発行事業者登録などと税務署の情報収集の環境が良くなりました。さらに、コロナ禍の時期に多くの税務署で紙のデータをコンピュータで扱えるようにデジタル化を進めたことも大きいそうです。

 ところで、KSK(国税総合管理システム)は20年以上前から運用があるのに一般に注目されなかったのは、使い勝手がよくなかったからでしょう。それぞれ、業務管理、納税者管理、資料管理など分野ごとにホストコンピュータが違い、IBM・NEC・日立等敢えて一社に任せず、OSその他もバラバラでデータベースも違う。だから不具合も想像されます。今回の新しいKSK2では、データベースが統合されるようで効率的な活用が期待されています。

 生成AIの活用は税務行政では期待出来ません。通常、生成AIはインターネット上の情報を自動収集し学習します。国税のコンピュータは直接繋がっていません。税務職員が集めたもの(依頼して収集したものも含む)で情報(データ)が成り立っています。情報漏洩やセキュリティの関係だと思われますが、今後も変わらないでしょう。最近の若手税務調査官は以前より残業が出来なくなっています。一般の大手企業と一緒です。そうすると調査報告書の作成に時間を割くことが出来ないと思われます。個別事情に深く踏み込んだ情報を残すことが出来ません。そうであるならば、あまり質の良くない情報をクローズなAI技術で活用しても、合理的な推論は出来ないでしょう。例えば、業種ごとの所得率や経費率なども、業務が多様化していて副業も奨励される時代、データだけで、要調査企業の選定を決めることは出来ないはず。実地調査で初めて企業の実態が判明することが多いものです。

 オンラインを活用した調査等(デジタル庁が音頭)が言われていますが、ハードルが高く、当分は普及しないものと思われます。だだし、最近の調査官はノートパソコンを持参することが多いので上司とのやり取りなどがスムーズになり、「持ち帰って検討する」が減り、調査時間が短縮される可能性は大きいでしょう。事前の会計データの提供要請は、調査期間短縮を条件に受けるのが良いでしょう。