
お知らせ
新人に仕事をさせてみると、物覚えが良く早い人とミスが多く遅い人が出てくる。ミスが多い人は注意力に欠ける気質の場合もあるが、仕事の段取りや手順をよく理解していないことが多いようだ。しかも、手順などを丸暗記に近い形で覚えようとしている。したがって、以前教えてもらったものと次にやる対象が少し違うと、戸惑い上手く行うことが出来ない。上司等が前に教えたと言っても理解できない。 見えている世界が違うのである。プラモデルのパーツのように決められたものを決められた手順で当てはめていくと完成すると期待しているのだろう。実際、仕事では全く同じことは多くないので、9割ぐらいが似ていれば可能なのかも知れない。ところが教えた側からすると、以前のものと全く同じではないが、基本の原理(手順)は一緒だから、6~7割程度の類似でも実行可能だと考える。違いに目がいき、出来ない(分からない)となるか、類似共通点が見いだされるから可能だ、何とかなるの違いだ。
応用が得意な人は、目的を理解してから手順等を確認する。また、手順等も法則や公式のように一般化して理解しようとする。目的が分かっているから、やり方を変えることも可能となる。手順(段取りや手段)も全体をひとつの部品(モジュール)として理解していくので、引き出すのも簡単である。
方向音痴の人が、「どこどこの信号を過ぎて○番目の交差点を左に曲がって50m先の赤い屋根の花屋を右折して・・・・」のように覚えていて、道路が通行止めで目的地にたどり着けないようなものである。これに対して頭の中に地図が想像できる人は、違った道を通っても最終的に目的地に到達出来る。これと同じことだろう。このようなことから、全体像をまず教えてから部分へ行くのが良いと思われる。
しかしながら、応用が苦手な人ほど回りくどいことは抜きに、早く解決策や指示を仰ごうとする。 これでは、その場しのぎの解決法であるから、仕事のスキルは上達し難いだろう。
昔、モノのない時代は、遊ぶ道具なども自分たちで作ったりしていた。無いから作る。売っていても高くて買えないから、あるもので応用する。しかしながら、成熟した今日では、自分たちで作ると言う発想は必要なくなったようだ。欲しいものはインターネットなどで調べて購入する。ホームセンターや100円ショップに行けば、面白いものも手に入る。しかも、自分で作るよりも遙かに良い。
仕事で必要な情報や知識も、専門書を読んだりせず、まずはネットで調べるのが普通になった。そして必要なものはコピペ(切り貼り)して使う。最近ではチャットGPTなどで無料(あるいは有料)でそこそこの文書あるいは画像なども作成してもらえる。これでは自分で考える力が鍛えられないようだ。
ところで、チャットGPTをはじめとするAIツールが仕事に積極的に活用される時代はすぐそこまで来ていると思われる。今後インターネット経由のツール(アプリ)は見えないところで、AIツールが活用されるはずだから。そのなると、ネットでの問いかけ(質問・検索)にもAIの特質を理解したうえでの活用が望まれるようになる。上に挙げたような応用の苦手な人が行うネットツールでの問いかけは、要領を得ないのでAIツールが早く正確な回答を行うことが望めない。論理的思考による問いかけが出来なければAIも曖昧な回答しか出来ない。しかも、あまり頭を使わないルーティンな仕事はコンピュータが得意であるから、AIにアシストされた業務ソフトが取って変わることになるだろう。例え、少子化で人手不足であっても、仕事のできない人(AIに支援を受けるとしても)は、必要とされなくなるかも知れない。頭を使い、創造的な仕事ができる人で他人の心(感情)に配慮できる人は心配は無い。
令和7年5月 262号(R07.05)
応用が得意な人と苦手な人