
お知らせ
そもそも経営には単一の正解と言えるものは存在しない。では最適解を求めるのが良いかと考えることも出来るが、人・もの・金の限りある経営資源と現在の政治・経済・社会等の経営環境および将来予測から、無数の組み合わせがあるし、また、経営者の哲学、考え方、性格等により実行に制限もある。さらに、全く初めてのことなど、実際にやってみないと分からないことも多々あるものだ。
強い決意をもって成功するまでやるのが成功の秘訣だとする思考もあるが、精神論として望ましくても、資金等に余裕のない中小零細企業では、家族や従業員を含め多くの利害関係者に迷惑をかけることになる。撤退(損切り)の基準を設けて挑戦するべきだろう。しかしながら、せっかくここまで資金を投じたので後少し頑張ってみようと考え継続し、損失を大きくする事例は多いようだ。
やるべき重要課題は、全て実行する覚悟は必要だ。学生は試験でヤマをかけて外れても、後で挽回できるが、経営では失敗となり、場合によっては会社が傾くこともあり得る。とは言っても、全てに経営資源を配分ことは不可能だから優先順位を決め、ひとつずつ解決していく。このときの基準は、解決することにより影響(効果)の大きいものから手を付けるのが良いとされる。しかしながら、効果の大きいものは大抵、困難で手間が掛かることが多い。従って、やりやすいものから片付けていく者もいる。そうすると重要課題はなかなか解決されない。ただ、全くの初心者は出来ることから始めるのも良いだろう。スポーツなどの例では、準備運動や基礎が不十分なのに、いきなり上級者が行う難しい課題に取り組めば怪我や事故に繋がる。しかしながら、いつまでも準備運動に毛が生えたようなトレーニングばかりで、試合想定の実戦練習や記録に挑戦しなければ、強くなれない。経営課題の挑戦も同じであろう。そして、効果の大きい課題を解決していくと、かなりの似たような同程度以下の課題がいつの間にか消滅していると言う話も聞いたことがある。だから、実際、当初の課題を全て取り組む必要は無かったということになる。経験を積み、自信がつけば、不可能と思われた課題は少なくなり、ほとんどが努力すれば何とか解決できる課題ばかりだと認識出来るようになる。
さらに多くの経験を積んでいくと、自社(商品)の強み、弱みの理解が深まる。そして、ライバルの強み、弱みにも注目出来るようになる。経営環境の変化の兆しや予測から、どのように動いた方が良いかうっすら見えてくる(予想や仮説の精度が上がってくる)。対処療法が中心で、今まで後回しだったリスク対策も他社に先駆けて、行う必要があることが理解出来るようになる。
経営者(リーダ-)が成長するのつれて、見える景色(経営の課題)が変わってくる。作業やルーティンワークは現場や部下に任せ、少し先の将来の計画や準備に問題意識を持てるようになる。と言うかそのようになれる人が管理職にふさわしい。いつまでも現場仕事が大好きでダメなプレーイングマネージャーは一定数いる。その人たちは、スペシャリスト(技術・専門職)として活躍すれば良いと思われるが、一流でなければ必要性は低くなるだろう。なぜなら、熟練による標準的な精度の仕事は今後AIやロボットが行うことになるからである。状況に応じ、責任の範囲内で仕事を変化修正させる能力が必要になるだろう。これは、広い意味での経営能力の一部と言える。頭を使って仕事をするから楽しいと感じるのであり、あまり頭を使わず決まっていることを決まった通りするのは単なる作業でつまらないものでしょう。そうすると多能工化も必要があるかも知れません。
令和7年4月 261号(R07.04)
経営に正解を求めてはいけない!?