
お知らせ
私の答えは「時と場合による」である。短期か長期か、あるいは課題の重要性や優先順位によっても変わってくる。よく、「目標が低すぎるとモチベーションが上がらず、成長に繋がらないため良くない」と言う人がいる。しかし、新しい習慣の定着や一定期間の継続を目標とする場合なら、取り組めば100%達成出来る目標でも悪くないはずだ。継続によって本来の目的が叶うのであれば、それで十分だからである。
また、状況に応じて目標設定の基準は異なる。
・1~3%程度の改善を目指す場合
これはルーティンワークなどの作業的な仕事に対して、小さな改善や工夫を期待するケースだ。ちょっとした効率化や心遣いを意識させることで、単調な仕事に思考や努力を促す意図がある。小さな積み重ねでも数値に変化は生まれるが、これは明確な数値達成というよりも、意識や質の向上を狙う意味合いが大きい。
・5~20%の向上を目指す場合(一般的)
筋力トレーニングと同様、成長には一定の負荷が必要となるため、全力で頑張って届く数値の「少し上」を設定するのが良いとされる。何事も現状維持より成長が好ましいという考え方がベースにあるからだ。なお、数量的な増加が不要な場合は、作業時間の短縮が目標となることもある。
多くの企業では売上増加が求められるため、目標達成に苦心する人も多い。経営側としては、当初の目標に届かなくても前年より数値が伸びていれば「成長できた」と捉えがちなため、可能な限り高めの目標を設定させる傾向がある。
しかし、ここで問題となるのが「生産性や効率を上げる仕組み」がないまま高すぎる目標を課すことだ。その結果、労働時間の延長(残業)によって無理に達成しようとする事態が起きやすくなる。これでは残業代がかさむだけでなく、疲弊によるトラブルや事故のリスクも高まり、会社にとっても決して望ましい結果とは言えない。
・50~100%以上の飛躍を目指す場合
2割程度の向上であれば既存の仕組みと努力(残業等含む)で達成できるかもしれないが、5割以上の向上となると、業務の仕組みや段取りそのものを大きく変えなければ不可能だ。単なる改善・改良の域を超え、技術革新や構造改革といった大がかりな変革と「知恵」が求められる。そのため、事業を飛躍的に成長させる目的で、あえて一見無謀とも思える目標を掲げることがある。
荒木博行氏の著書『努力の地図』(クロスメディア・パブリッシング)の第1章「『努力』を構造化する」では、努力を4階建ての構造(①量の努力、②質の努力、③設計の努力、④選択の努力)として定義している。さらに、①と②を「直接の努力」、③と④を「間接の努力」と分類している。
50%以上の大幅な向上には、この「③設計」や「④選択」といった間接の努力が不可欠となる。しかし、これらをやり慣れていない人や苦手な人にとってはハードルが高く、最初から「無理だ」と諦めてしまいやすいため、万人に対して一律に求めるべき目標設定ではないだろう。
時間が限られている場合は達成可能な現実的な目標が求められ、時間に余裕がある場合は難度の高い目標に挑戦すべきである。
そして最も大切なのは、「すべての業務を同じ基準で評価・設定しない」ということだ。業務の中には継続や現状維持が重要なものもあれば、腰を据えてじっくり取り組むべきものもある。目標は高すぎても低すぎてもいけない。重要なのは「本来の目的に近づけるかどうか」である。
そのためにも、上司や自分自身とじっくり向き合って適正な目標を判断していく必要がある。他人と比較するのではなく、それぞれの置かれた状況に合った目標を設定してほしい。
令和8年月 277号(R08.08)
「目標は高い方が良い」とよく言われるが、本当にそうだろうか?